「突然だけど、新しい任務よ」
鋼鉄の女、と呼ばれる女上司からの無情な連絡にボクは思わず身構えてしまった。
「え? 今日からしばらく休暇に入るって言ってありましたよね?」
上司は、ボクの言葉が聞こえているはずなのに、何事もなかったかのように話を続ける。
難度の高い女装潜入任務を終え、ようやく休暇に入れると思っていたボクの元に女上司からの冷たい通達。
しかも、王族がらみの任務だという。
一体、どんなヤバイ仕事なのか……、そう思っていたボクは耳を疑った。
「え? ただ、学園生活を送るだけ……?」
「そうね。今渡した資料にある人間の学校……そこに生徒として編入して欲しいのよ。もちろん、『人間』として」
どうやら、神界の姫君が近々、人間界への留学を考えているようで、その下調べに行ってこい、ということだったようだ。
潜入先は人間界にある、人間だけが通うことのできるごくごく普通の学園。
そこに一体何が……。
ボクに選択の余地は無かった。
夏には長期休暇をとって思いっきりエンジョイしよう……。
そう思いつつも、ボクは顔に出さずに敬礼したのだった。
本作の舞台。
都心ほど発展しているわけではないですが、駅前はそれなりに発展している「平均的な」都市。
金剛町にある名門の私立学園。
バーベナ学園のように多種族に開かれた学校ではなく人間だけが入学できる学園。
進学率は高く、スポーツも結構優秀な成績を残しているらしい。
佐波理学園の周囲に点在する学生寮のひとつ。
学園の敷地内にある寮ではなく、町中にあるシックな邸宅。
遠方から入学した学生などは、申請すればどれかの寮にあてがわれる。
魔族や神族を受け入れる国内でも有数の名門校。
ヒロインのローズは国立バーベナ学園の交換留学生として佐波理学園にやってきた。